■はじめに

「生産管理システムって、なぜ必要なの?」
「どのシステムが自分たちの製造スタイルに合うのか分からない。」
「一度多額な投資をして導入したが、使い勝手が悪く結局やめてしまった…」

生産管理システムを選定・導入するにあたって、このようなお困りごとに直面する方も多いのではないでしょうか?
本記事では、そのような方のために、生産管理システムの概要と選定方法をご説明します。

■生産管理システムとは

生産管理システムは、JIS日本産業規格で
「生産管理を系統的に行うために,生産に伴う現品,情報,原価(価値)の流れを統合的,かつ,総合的に管理するシステム(引用元:JIS 生産管理用語)」
と定義されています。

生産管理システムを使うことで、
原材料の調達から完成品の出荷に至るまでの
モノづくりの全体のプロセスをまとめて管理することができます。

エクセルで情報を管理している企業では、情報が部門や担当者ごとに閉じてしまいます。
結果、状況を担当者に聞かないと分からなかったり、都度現物を見にいって確認する必要があるのではないでしょうか。
そのような情報を生産管理システムに集約させることで、各人が必要な情報を効率的に確認、管理できるようになります。

■生産管理システムの機能

生産管理システムの基本的な機能をご紹介します。

・在庫管理

材料、部品、中間品、製品などの在庫の数量や、ロットなどの情報を管理します。
今ある在庫の把握だけでなく、発生・消費の計画と照らし合わせができれば、欠品を事前に予測して、調達や生産手配につなげることができます。

・受注管理

顧客から受けている注文の品目や量、納期、金額、出荷状況などを管理します。
受注毎の進捗確認や、受注残に合わせて生産計画を立てられるシステムもあります。

・資材所要量計算(MRP)

BOM、生産計画、在庫にもとづき、将来の生産に必要な資材の数量と時期を算出します。
人員や設備を考慮した生産計画まで行うものもあります(MRPⅡ)。

・製造管理

受注情報、生産計画をもとに、生産の指示を出します。
BOM、受注情報やMRPなどの情報にもとづき、実際の製造の指示と実績管理を行い、
指示書を発行します。
製造する品目と数、製造日、使用設備などの情報があります。
実績にもとづき、在庫の差し引きを行います。

・購買管理

製造に必要な材料、部品の購買情報の管理、手配を行います。
品目と量、仕入先情報、発注日、入荷日、金額などを管理し、注文書を発行します。
発注ステータスが正確に把握できれば、発注漏れを防ぐことができます。

・原価管理

製造プロセスにかかる費用を把握します。
原価をきちんと把握できれば、例えばコストがかかっている箇所を把握し、改善することが可能です。

・品質管理

製造した中間品や製品の検査結果を管理することができます。
過去の検査結果をトレースできれば、不良品発生の原因追及、早期対策にも役立ちます。

上記のような機能をもつシステムの導入により、属人性を排除し、
オーダー、在庫数、生産計画、工程進捗状況といった情報の正確な管理を簡易化できます。
さらに、これらをリアルタイムに把握し、生産計画に反映させることができれば、状況に応じて効率的な生産が実現できます。

■生産管理システムのメリット

生産管理システムで必要な情報を把握できるようになることで、
以下のようなメリットがあります。

1. 業務の効率化、脱属人化
2. モノづくりの情報を正確に把握
3. 在庫の適正化
4. 納期遵守率向上、リードタイムの短縮

それぞれについて解説します。

業務の効率化、脱属人化

手作業で行っていた業務を自動化することにより作業時間の短縮を図ることができます。
また、正確なデータをもとに生産計画を立てることで、
これまで担当者の経験や勘を頼りにしていた計画策定を標準化することができます。

モノづくりの情報を正確に把握

生産に関する情報を様々な情報をシステムで管理することによって、見たい情報を見たいときにすぐに把握することができます。正確な情報をもとに生産管理の改善にも繋げることができ、手動によるミスの軽減にも繋がります。

在庫の適正化

在庫やオーダー、生産計画の情報を数字で管理、分析することで、過剰在庫や欠品の解消に繋げることができます。
また、当社の生産管理システムADAPユーザー様では、現場のキャパに基づき、優先順位のついた最適な計画策定ができるようになったことで、仕掛量を45%削減することができたという事例があります。結果的に、在庫量の適正化により、生産リードタイム短縮まで実現することができました。

納期遵守率向上、リードタイムの短縮

調達指示や在庫の情報を一括で管理することができるため、材料や部品の手配漏れや誤発注を防止することができます。
材料調達から生産までスムーズになることで、リードタイムの短縮が見込めます。

■生産管理システム選定時のポイント

生産管理システム導入で成果をあげるには、
自社に合う生産管理システムがどれか、正しく見極めることが必要です。
選定時のポイントは主に4つあります。

① 導入目的を明確にする
②生産形態にあったシステムを選ぶ
③トライアルを実施する
④目的からズレたカスタマイズをしない

それぞれについて解説します。

①導入目的を明確にする

生産管理システムの導入で何を実現したいのか、プロジェクトメンバーで明確に合意する必要があります。
その際、担当者目線だけでなく、トップの目線を取り入れることが重要です。

生産管理システム導入は、生産管理改革の大きなチャンスです。
「現状の業務フローをそのまま自動化して工数削減」を目的とする方もいますが、導入費用に見合う工数削減を実現はできるのでしょうか。
将来を見据えて、業務をどのような流れに変えると企業や従業員にとって一番良いのか、経営的な改善も含めて考えることをおすすめします。

②生産形態にあったシステムを選ぶ

個別受注生産(受注→設計→生産)と、見込み生産(設計→生産→受注)では業務フローが異なるため、必要となる生産管理システムの機能も異なります。
例えば、個別受注生産では製番管理機能が必要になるでしょう。
見込生産では、実需だけでなく、内示や販売計画にもとづく計画機能があると便利です。
詳しくは別記事で解説しておりますので、ご確認ください。

③トライアルを実施する

システムによっては、デモや質疑応答だけでなく、自社製品のデータで実際にお試し操作をするトライアルが可能です。
目的を実現するための機能が備わっているか、自分たちの目で確認することができます。

生産管理システムを導入で業務フローを見直すことがあるので、自社製品でトライアルをする際に「データを全て入れて、全く同じ動きが再現できるか確認する」やり方は必ずしも適切ではありません。
まずは、システムがどのようなロジックで動いているか、何を管理できるのかを人が理解できるように、代表製品に絞ってトライアルすることがおすすめです。
全てのデータを入れてみるのは、システムの全体像が理解でき、最後に全てのデータを入れて回してみるとシステムの処理速度を確認することができます。

④目的からズレたカスタマイズをしない

カスタマイズにより、現状業務にぴったりはまる機能を備え、見慣れた画面で操作できるシステムの導入も可能です。
しかし、システムのカスタマイズは通常、パッケージ費用と同等かそれ以上のコストが発生するため、導入コストが高くなります。
また、要件定義、設計、開発のプロセスで時間がかかり、社内の工数も発生します。稼働して初めて足りない機能に気付くこともあります。

また、カスタマイズをすると、つい今の業務や現行システムに寄せた機能を実装してしまう傾向にあります。
その結果、不要な機能を実装したり、本当は改善できるはずだったことが変えられない可能性があります。
実際に、カスタマイズで多額のコストをかけてシステム導入を行ったものの、投資のわりに効果を得ることができないケースは少なくありません。
生産管理システム導入の目的をきちんと押さえた上で、必要な要件や仕様を決めることが重要です。

「ERP」や「生産スケジューラ」との違い

生産管理システムと、ERPや生産スケジューラを混同される方がいらっしゃいます。
この2つのシステムと生産管理システムの違いを解説いたします。

1. ERPと生産管理システムの違い

ERPは、企業活動に関わる幅広い情報を管理するものです。
大きく見ると、生産管理システムの役割との重複も多いですが、ERPでは会計の機能を重視することが多く、MRPや生産管理の機能が限定的であったり、カスタマイズを前提とすることが多いです。
会計までひとつのシステムでカバーできるメリットである一方で、求めている機能がきちんと備わっているか、注意して選定を行う必要があります。

2. 生産スケジューラと生産管理システムの違い

生産スケジューラは、精緻で最適な生産計画立案を目的としているツールです。
作業の設備の割り振りや、時間割を最適化します。その分、マスタも制約条件を細かく設定します。
生産管理システムと異なり、MRPや在庫管理などの機能は持たないことが多いです。現在の状況をインプットした上で、計算機を回すようなイメージのツールとなります。

まとめ

「生産管理システム」は生産管理業務を手助けし、
日々求められる生産量を最適かつ効率よく製造できるように
計画の策定を手助けするシステムです。

最新の生産現場の状況にあった
正確かつムリムダのない管理と計画を実行するには、
生産管理システムで「どれだけリアルタイムに情報を反映できるか」
「全員で共有できるか」ということが大事になってきます。
また、計画を立てる際には
「設備の生産能力をきちんと考慮できるか」「自動で山崩しが可能か」
というのも非常に重要なポイントになります。

生産管理システムADAPでは、
「サプライチェーンの見える化」と「機敏な調整」をコンセプトに掲げており、
インターネット上で、顧客オーダー、在庫、生産、物流、調達までを
リアルタイムでフレキシブルに管理していただけます。
また、計画時には、設備資源の生産能力を考慮したうえで自動で山崩しを行うため、
工場の実状にあわせてムリのない計画を立てることが可能です。
「リアルタイムな状況に合わせて機敏に調整が可能で、
かつ正確な計画策定ができるシステム」を選定することで、
ムリやムダのない生産が可能になり、サプライチェーン全体の整流化を実現できます。
その結果、大幅な「在庫削減」や「納期遵守率の向上」「生産性向上」といった
経営的な効果を達成できます。