物流の2024年問題 製造業への影響と対策
1.物流の2024年問題とは
物流の2024年問題とは、順次各業種に施行されている働き方改革関連法が、2024年4月から「自動車運転の業務」も対象となることによって生じる物流の諸問題のことです。年間の残業時間の上限が960時間に規制され、月60時間を超える勤務に対しては50%の割り増し給与が義務付けられます。
これにより、運賃の上昇やドライバー不足が生じることは想像に難くありません。シンクタンクからは、対策を講じないと2030年には35%のモノが運べなくなるという予想も出ています。
2.物流の2024年問題 製造業への影響
製造業へはどのような影響があるでしょうか。
今までの「何でも、どこまでも運びましょう」という状況が一変し、不定期不定量の荷物を運んでくれるトラックを手配しにくくなります。当然、物流コストの高騰は免れません。さらに生産の影響という意味では以下のような影響が生じることになります。
①原材料が届かない
ここ数年間、半導体をはじめとした電子部品の供給難により多くのメーカーが「モノが作れない」という状況に陥りました。当社がおじゃました工場でも、完成間近の仕掛品がずらりと並び、一つの部品の入荷を待っているという光景を目にしています。
2024年以降ドライバー不足が深刻化した電子部品だけでなく、様々な原材料が、予定した期日に入荷されないという事態がゲリラ的に襲ってくることが懸念されます。その結果、早く運んでもらうために物流コストが高騰する、納品リードタイムが長期化することが予測されます。
②作った製品が運べない
無事に製品を作ることができても、配車ができず納期に間に合わないという事も起こりえます。実際に当社が話をうかがっているメーカー様でも何社かその予兆は現れています。トラックを確保できないということが判明した瞬間、他の運送手段の確保や、製品の置き場の問題、お客様との調整など、対応に追われることは想像に難くありません。
3.ADAPによる物流の2024年問題への対策
近年、ADAPのユーザー様からは、コンテナ積載率100%、Air便0化、まとめ配送による年間数百万円の物流コスト削減などの成果が報告されています。ADAPがなぜ物流効率化に役立てているのか紹介します。
①調達品の遅延への迅速な対応
モノが届かない可能性がある状況でまず大事なことは、サプライチェーン上のトラブルとその影響範囲を早急に把握することです。例として、資材の入荷が予定より2日遅れるということが判明したとします。その資材がいつどの工程で使われる予定なのか、どのオーダーの納期に影響するのかを、各部門が協力して見極めて対策を講じる必要があります。この時、部門間で情報共有に遅れや抜け漏れが発生すると、対応が遅れて悪影響が広がる原因となります。
ADAPを使うと、資材入荷遅れによる全工程への影響を、正しく瞬時に把握できます。ADAPはオーダーから調達までのすべての工程を「つながり」を維持しているため、納品が遅れる資材が、いつどの工程に何個使用されるのか、どのオーダにつながっているかが分かるためです。資材が遅れる分、後工程の生産を詰めても工場のキャパは大丈夫か、使用予定のない代替品が余っていないかということもすぐに確認できます。これにより早い段階で適切なリカバリー策をとれるようになります。
②物流サイドへの情報共有による確実な出荷
使えるトラックが減る分、なるべくそのトラックは効率的に使いたいものです。ADAPは先々の生産計画や出荷計画をリアルタイムに物流部門に共有できるため、配車計画を立てやすくしたり、まとめて運ぶような調整をしたりしやすくすることが可能です。直前に運ぶモノが分かる状態とは大きな差が生まれます。また、ADAPは追加費用なしで輸送会社をユーザとして登録できるため、輸送会社サイドでの効率化も可能になります。
さらに、工場の負荷計算と同様に、物流の負荷を考慮した計画を立てることができます。これらの機能により、製造と物流の垣根が取り払われ、たがいに調整しあえることを目指しています。
ADAPで情報共有を行うだけでも、人が調整しあうことにより物流効率化が期待できます。その上で、複雑化・属人化しがちな積み荷や配車の計画をシステムで考えることができると、さらに物流効率化の効果は高まります。
当社でも、さらには物流拠点の最適配置などの物流にまつわる課題を数理的手法で解く取り組みを長年にわたって行い、実績を上げています。大きさがバラバラ、重い、納品時間がタイトなど「運びづらい」貨物にお悩みの方は、こちらもご参照ください。
最後に
より良い働き方を指向して作られた法によって、混乱による業務負荷増大となる人が増えては本末転倒です。ITを上手に活用して乗り切りたいものです。