受注生産とは

「受注生産」とは、お客様からの注文をもらってから生産する生産方式です。
もう少し厳密に定義されている日本工業規格(JIS)の定義では、「顧客が定めた仕様の製品を生産者が生産する形態」となっています。

受注生産の業務フロー

受注生産の、基本的な受注から出荷までの流れを説明します。

Made-to-order workflow


1.受注管理・・・顧客との契約、製品の見積もり、製品の注文内容を管理します。

2.生産計画・・・受注管理の情報をもとに、生産のスケジュール管理を行い、製品の出図を行います。

3.製品生産・・・進捗確認を行いながら、1日の生産目標の達成を目指します。

4.出荷前検査・・・品質の確認のために出荷前検査を行い、製品を梱包します。

5.出荷管理・・・出荷から顧客に製品が届くまでを管理します。

受注生産と見込み生産の違い

「受注生産」の反対語は、「見込み生産」です。
お客様からの注文をもらう前に、生産しておいて、注文が来たら即出荷できるように製品の在庫を持っておく生産方式です。
身近な例を挙げると、回らないお寿司屋さんが受注生産で、回転寿司が見込み生産です。

受注生産と見込み生産の比較

受注生産と対比の関係にあるのが見込み生産です。見込み生産は、顧客の需要を見越して生産を行います。受注生産と見込み生産の特徴的な部分を比較した表を下記に示します。

Make-to-order or Make-to-stock

受注生産のメリット

受注生産のメリットは、在庫を持っている必要が無いので、在庫のための費用が発生しないことと、売れ残りや廃棄のリスクがないことです。

受注生産のデメリット

受注生産のデメリットは、お客様の注文を受けてから納品するまでのリードタイムが、長くなることと、大量生産やまとめ生産による効率向上がやりにくいことです。

受注生産と個別生産の違い

受注生産と個別生産との混同に注意してください。お客様の求める仕様に合わせて、1点1点 設計して生産するような個別生産品は、当然受注生産となります。 
しかし、このような状況で「うちは、受注生産です」とだけ言われると(嘘ではないのですが)あらかじめ設計は決まっているけれども、受注してから生産する方式と区別ができません。

Made-to-Order and Individual-Production

システムを探したり、コンサルを依頼したりするときには、「個別設計」ですとか、「一品料理です」と明確に伝えるようにしてください。無用な混乱を避けることができます。

受注生産か見込み生産か、選択の実態

「受注生産」か「見込み生産」のどちらか一方を採用している企業は、ほとんどなく、多くの場合両方の混在となります。
混在の仕方には、製品による混在と、工程による混在があります。
 
・製品による混在:安価なコモディティ品は見込み生産で、高級品は受注生産。
・工程による混在:上流工程は見込み生産で、下流工程は受注生産。

デカップリング・ポイントを見極める3つのポイント

工程による混在の場合、見込み生産と受注生産の間にある在庫ポイントを、デカップリング・ポイントと言います。

デカップリング・ポイントの選定は、その在庫品が
 
①汎用性がある
②賞味期限が長い
③デカップリング・ポイントから製品までの製造リードタイムが、全体のリードタイムより大幅に短く納期遵守に有利である
 
という3つの条件を満たしているところが適しています。回らないお寿司屋さんの場合では、魚の「さく」と、酢飯がデカップリング・ポイントです。
「原材料は足が長いから早めに確保しておこう」というような現場感覚は、「原材料がデカップリング・ポイントに適している」と同義語です。「カンと経験だ」と卑下せずに、3条件をチェックして、合理的な決定であることを確認してください。

受注生産が向いている業態・向いてない業態

向き不向きは、製品によって決まるのではなく、業態で決まります。

生産量が少ない、どの製品の注文が来るのか定かではない、事業規模が小さくて資金の余裕がなく在庫リスクを負うことができないなどの業態では、受注生産を選択せざるを得ません。また、高級品や競合がいない場合で、お客様が待ってくれる条件がそろっていれば、受注生産方式を選択することも良い戦略です。 

反対に、コモディティ化された製品で競合がいる場合には、短納期化も勝負の重要な要因になりますので、受注生産では出遅れてしまいます。