■生産管理システムの導入が失敗してしまう理由

なぜ、生産管理システムの導入は失敗してしまうのでしょうか。
それは、部門間の「相互信頼」と「参画意識」の不足によることが大きな原因です。

生産管理システム自体は、各部門の業務に最適化されているので、それぞれの部門内では、決まった生産計画に対してはうまく機能します。

しかし、実際の製造の現場では、短納期の受注が急に入ってきたり、調達できるはずの部品が欠品したりと、日々予期せぬ事態が起きています。
そのため、当初予定していた生産計画が変更になることが頻繁に起こるわけですが、計画変更によって他の部門がどんな状況になっているのかがわからないため、自分の部門の計画を守ろうとして、部門間の対立が起きてしまいます。
これは、部門間の「相互信頼」がないことが原因です。

また、「生産管理部門から指示される生産計画には必ず従わなければならない」という業務フローで日々の業務を行なっていると、「参画意識」が芽生えることはありません。生産管理システムを運用している限り、部門間の「相互信頼」と「参画意識」は永遠に必要となります。

よくある失敗のパターンには、サプライチェーン・マネジメントに対する部門間の「相互信頼」を促す仕組みや、生産管理への「参画意識」を醸成させる仕組みがなかったのです。

■生産管理システムの導入失敗のパターンとその理由

(パターン1)現状の業務要件を綿密に調査してシステム化しようとした

現状の業務要件を整理していく場合、各部門の役割分担がベースの考え方となります。
多くの企業では、営業部門は販売、製造部門は計画通りの生産の実施、生産管理部門は生産計画の仕事というように、部門別に機能が分かれています。

そのため、販売部門や製造部門の生産計画への「参画意識」が希薄になっています。
モノの流れは、部品・原材料の調達から製造・出荷・お客様まで、一蓮托生でつながっています。 全部門の「参画意識」がなければ、うまくまわりません。

(パターン2)部門ごとのあるべき姿を描こうとしたが、それぞれの部門の主張がまとまらない

部門ごとあるべき姿を追求するパターンでは、現状の部門別の機能が前提となるために、部門ごとの仕事の標準化や効率化にとどまってしまいます。
また、あるべき姿を追求すると、部門間での利害が対立してしまい、それぞれの部門の主張がまとまらなくなってしまうケースも多くあります。
多くの会社の部門構成が、機能別の縦割りとなっており、部門ごとに目標を達成するように管理されています。
部門別の機能と目標達成が前提となっているため、「相互信頼」が進まないのです。

(パターン3)在庫管理システムを導入したが、その先が進まない

在庫管理だけ先行させるパターンは、数を数える業務を効率化したことにとどまり、本質的に生産管理を改善するには至りません。
現状の在庫数によって、販売計画、調達計画、製造計画が変更できる仕組みがないと、「相互理解」につながらない。

(パターン4)ERPシステムを導入したが、使われていない

ERPパッケージの多くは、会計を基本にしたシステムです。 MRP(所要量計算)や生産管理機能も持ち合わせているものもありますが、基本は会計です。
そのため、計画の変更やマスターデータの変更に、会計処理の変更が紐付いてきます。 会計処理について経理部門の専門家並みの知識がない、製造部門では気軽に計画変更やマスターデータ変更ができません。
そのため、ついつい億劫になってしまし、システムが使われなくなってしまいます。

(パターン5)生産スケジューラ導入の失敗

スケジューラの導入は、計画を立てる業務をコンピュータの計算力で自動化・半自動化し、人が考えていた計画よりも製造効率や納期遵守率の良い計画を作成することです。
目まぐるしい変動に対応し、なおかつ各部門からの要望に応えるスケジュール作成は、システムまかせでは難しく、スケジューラを利用する個人のスキルに頼るところが大きくならざるを得ません。
かえって担当者の俗人化がすすみ、部門間の「相互信頼」や「参画意識」はえられません。 計画担当の負荷がオーバーして充分にかつようされなくなったり、担当者が変わったとたん使われなくなったりしてしまいます。

■生産管理システムの運用に必要なのは、部門間の「相互信頼」と「参画意識」

このように、生産管理システムを効果的に運用していくには、部門間の「相互信頼」と「参画意識」が必要です。

生産管理システムの導入を考えるときに、システムの仕様や機能・画面の使い勝手など、技術面へ意識が向いてしまいますが、システムを導入し、効果的に運用するには、実は、部門間の「相互信頼」と「参画意識」という、人的な要素も非常に重要なポイントのひとつです。